ナムチェ・バザール (ネパール) : エヴェレスト・トレッキングの拠点
[ エヴェレスト方面略地図 ] [ 日程表 ]
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                                                              土曜定期市


 ドゥド・コシ (コシは川の意) の渓谷を登って来るとクンビラ (5761m) の山塊にぶつかり、上流は二股に分かれる。北東に向かうのがエヴェレスト方面に到るドゥド・コシ本流、北西に向かうのがターメを通って北上しチベット本土との交易路であるナンパ・ラ (ラは峠の意) へ到るボテ・コシ。正面のクンビラへの断崖を九十九折に標高差600m 登り切ると、そこがナムチェ・バザールだ。背後にはクンビラへの断崖が迫り、左右に聳える稜線は村を挟み込むようにしてそれぞれドゥド・コシとボテ・コシに迫り出している。標高3440m のナムチェは三方を山肌に囲まれたすり鉢状の棚地で、ボテ・コシに面した断崖だけが開けている。断崖の向こうには歩いて来た巨大なドゥド・コシの渓谷が真っ直ぐ伸びていて、左岸に聳えるクスム・カン (6367m) が印象的だ。


ナムチェを俯瞰する                                   ナムチェからドゥド・コシ下流を振り返る
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 小さな空港のあるルクラから歩いて2日、首都カトマンドゥからの自動車道路の終点であるジリからなら8日程の行程になる。この標高での600m 一気の登りはかなり辛いが、登り切れば食料品店や雑貨店、ロッジやレストラン、山用品店や土産物屋、喫茶店にケーキ屋まで立ち並ぶ町並みが迎えてくれる。小さな村だが外国人トレッカーや登山客で賑わう様は、これまで険しい峠や電気も無いような小さな村々を何日も歩いて来た目には、賑やかと言うよりむしろ華やかにさえ映る。僕が訪れたのは1999年早春だが、今ならインターネットも使えるようになっているのかもしれない。下から登ってきたトレッカー達は、例えルクラから2日しか歩いていないとしても、この村で連泊して高度順応するのが一般的だ。


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                                          ナムチェ・ゴンパ(背景はヌプラとコンデ・リ)


 毎週土曜日の午前中には傾斜地でハートと呼ばれる定期市が開かれ、沢山の人々でごった返す。周辺のシェルパ族たちにとっては生活物資を入手するために欠くことのできない市だ。売り手は低地から来たインド・ネパール系、国境を越えて来たチベット人と様々で、荒地の斜面いっぱいに広がった人々と溢れる色彩はまさにインドとチベットを繋ぐ交易の中心地としてのバザールの名躍如といった光景だ。実は僕がハートを見たのはこの後半月以上のトレッキングの後なのだが、写真に写った精悍な顔立ちをした男をこの翌日、ナムチェから3時間程のターメ村で再度見掛けることになる。彼は畑にテントを張っているところで、聞けばナンパ・ラを越えてチベットに帰る途中だと言う。標高5700m を上回る峠まで彼の足でも2・3日は掛るだろう。そこを越えて彼の村までは何日なのだろう。その間を、商品をテント・食料・燃料などと一緒に運んで来るのだ。帰路も売った金で買ったものを逆に持ち帰るのだろう。なかなか厳しい生活だ。因みにこのナンパ・ラは、2006年秋、越境亡命しようとした無抵抗のチベット人グループ70人に対して中国人民解放軍が発砲し少なくとも7名程が犠牲になったという映像が、外国の登山隊によって撮影された場所でもある。


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                             ハート (土曜定期市)

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 三方を山肌に囲まれたナムチェからの展望は南側だけで、深いボテ・コシの渓谷対岸に聳えるヌプラ (5885m) とコンデ・リ (6011m) の白い峰はナムチェを象徴する景観だ。ルクラで見た姿とは全く山容を異にしている。確かに反対側に来たのだ。民家は三方の斜面に広がっているから、郵便局に行くのもちょっとしたトレッキングのようだ。谷に向かって右側の稜線を登るとナムチェ・ゴンパがあり、その脇の細い路を北西に辿ればターメに到る。ゴンパから更に少し歩けばコンデ・リの先にテン・カン・ポチェ (6500m) まで見渡すことができる。


クスムカン                                                           タムセルク
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 北側の展望を臨むためにはこの反対側の稜線を登る。エヴェレスト方面へのルートだ。登り切ればドゥド・コシ対岸正面にタムセルク (6623m) が迫り、振り返れば馬蹄形のナムチェの村を俯瞰できる。少し先まで進めば、いよいよアマ・ダブラム (6812m) が姿を現す。クーンブ・ヒマールを象徴する名峰として名高いその姿の美しさには、まさに息を飲む思いだ。この先、路はエヴェレストの展望で有名なカラ・パタールエヴェレスト・ベースキャンプへの路と、優雅なチョー・オユー (8201m) とギャチュン・カン (7922m) の威容、そして美しい湖が印象的なゴーキョへの路とに分かれる。目指すエヴェレストの姿を目にするまでは、もうほんの一息だ (こちら)。


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                                               アマ・ダブラムとトレイル脇のマニ石
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by meiguanxi | 2009-02-20 23:39 | ヒマラヤ・チベット | Comments(2)
Commented by yamana at 2009-02-26 22:20 x
よっこらしょ、遅ればせながらやってまいりました。お久しぶりです。
2006年秋の時点でルクラまではネットが普及してました。ナムチェはどうだったか、記憶にありません。どんどん膨張していくナムチェバザール、この頃の写真とはずいぶん違って見えました。市も常設チベタン市があったりして、この頃とは変わったと思います。
それにしてもエベレスト街道はいいですよね! ルクラの想定外の待ちさえなければまた行きたいです。
Commented by meiguanxi at 2009-02-27 00:45
まあまあ、まずはビア・ラオ・・・は切らしてるのでシンハー・・・は高いのでチャン・ビアでも御一つ、どうぞご自由に好きなだけご自分で、自前で飲んでくださいw
常設チベタン市って、要するに土産物市ですか?そうですか、あんな山奥の狭い場所も拡張しますか・・・なんでしょ、旅行する人種が違ってきてるのでしょうか? まあ、確かに、僕なんかが行くってこと自体、その昔からは考えられないことなのかもしれないですけどね。
もう1回、なんて僕は気軽に言える歳ではないですが^^A; 死ぬ前までにはもう1回、カラ・パタールの狭い頂上に立って夕暮れのエヴェレストを眺めたいです。
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