ディンボチェ (エヴェレスト・トレッキング) : 奇峰とイムジャ・コーラ
[ エヴェレスト方面略地図 ] [ 日程表 ]
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                                                 行く手のタウツェ(パンボチェから)


 エヴェレスト・トレッキングの拠点であるナムチェ・バザールの稜線を登って暫く北に進むと漸く待望のエヴェレストが姿を現すが、1日目の宿泊地タンボチェはその絶好の遠望地として有名で、ここを最終目的地としてトレッキングをする人も少なくない。小型飛行機やヘリコプタが発着する小さな飛行場があるルクラからここまで歩くと高度順応のためのナムチェでの停滞日を含めて4日、首都カトマンドゥからの自動車道路の終点であるジリからなら既に10日になるのだが、標高3867m この村を出るといよいよ4000mを越える本格的な高所になってくる。タンボチェからはその本来の奇容をまだ隠して穏やかな面持ちのタウツェ(6501m) が見えるが、今日の目的地はあの山の向こう側だ。


パンボチェからの下りの樹林で遭遇したカモシカ                      イムジャ・コーラとアマ・ダブラム
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 タンボチェの丘からはシャクナゲなどの茂る樹林を谷まで下ることになる。運が良ければこの辺りではカモシカやシカに出くわすこともある。幾つかの集落を抜けてイムジャ・コーラ (“コーラ”は川の意) を対岸に渡る。この日の目的地の標高はタンボチェより4・5百メートル高いので、谷まで下った分を含めると結構な登りだ。しかしこのイムジャ・コーラ右岸 (進行方向左) は比較的広い谷で平坦な路が続く。ハイキング気分で2時間ほども歩けばパンボチェ村。石垣で狭く区切られたジャガイモ畑の中に幾軒かのロッジがあり、広く視界の開けた風景は6000mから8000m超の高山に囲まれているにも関わらず牧歌的な印象を与える。標高3900m の村なのだということを忘れてしまいそうだ。


パンボチェ村の畑とアマ・ダブラム                            パンボチェ付近からのアマ・ダブラム
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 ナムチェを過ぎてから見え出したクーンブ山群 (エヴェレストやその周辺の山群) 屈指の名峰アマ・ダブラム (6812m) は進むにつれてその山容を変えるが、パンボチェでは既に北側に抜けたことになる。この辺りからの姿が “母の首飾り” という意味のその名のイメージに最も近いように思われる。遠景の写真を見る限りでは随分遠いような印象を持たれるかもしれないが、実際の見た目では105mm の望遠で撮ったアップに近い。山頂までの地図上の平面直線距離で6km余り、標高差は3000m 近くにもなるのだ。


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                                     ポルツェ方面への山肌とドゥド・コシ(タンボチェから)


 尚、このパンポチェ村の背後 (進行方向左手) はタウツェやその奥のチョラツェ (6440m) へと続く稜線なのだが、歩いて来たイムジャ・コーラから離れて山塊の南側の山腹を右巻きにトラバースすれば、棚地のポルツェ村を経てドゥド・コシ流域に出る。僕の場合、この路はゴーキョ方面に向かうために、この10日後に歩くことになる。上の写真はタンボチェから撮ったものだが、右下がタウツェから下る山肌でこの斜面をポルツェ方面にトラバースする。正面の谷はドゥド・コシで、対岸にはゴーキョに伸びるトレイルが見える。右の山がゴーキョに向かう途中のマッチェルモ村の谷の奥に見えるキャジョ・リ (6186m)、左の峰は聖山と崇められるクンビラ (5761m)。ナムチェ・バザールの裏山だ。


ツロ付近からイムジャ・コーラを振り返る                           ディンボチェへの登りとローツェ
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 さて、タンボチェの高さへの順応さえ充分ならパンボチェを過ぎても比較的楽に歩けてしまうかもしれない。この日の目的地までは後2時間半から3時間ほど。ただしこの後は4000m の領域に入って行く訳だから、無理や体力任せの歩行は慎むべきだろう。やがてツロという所で左からイムジャ・コーラにチョラ・コーラが合流してくる。チョラ・コーラの上流は真っ直ぐ北に伸びていて、診療所のあるペリチェ村を通り過ぎて遡ればエヴェレストの最高の展望台であるカラ・パタールエヴェレスト・ベースキャンプに到る。一方、イムジャ・コーラはこの先ディンボチェから西に方向を変え、巨大な屏風のようなローツェ (8516m) 南壁と翼を広げたようなアマ・ダブラム北壁に挟まれたアブレーション・バレーを遡り、イムジャ氷河湖に到る。振り返ればタンボチェに覆い被さるように聳えていたタムセルク (6623m) やカンテガ (6779m) は遥か霞の向こうだ。


姿を変えるアマ・ダブラム(ツロの手前から)               タウツェが奇峰を現す(ディンボチェへの登りから)
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 ツロからチョラ・コーラを渡りガレ場を200m登り切ると、一旦視界から消えていたローツェ南壁が行く手を塞ぐように聳え立つ。だがここでは近過ぎてその向こう側のエヴェレストは見えない。振り返ればチョラ・コーラ対岸にタウツェとチョラツェが独特な威容で圧し掛かってくる。標高4350m のディンボチェは本来夏場のカルカだったのだろうが、今では幾軒かのロッジが建ち、風除けの石垣で区切られたジャガイモ畑が広がる。村の南 (進行方向右手) にイムジャ・コーラが流れ、その向こうにはアマ・ダブラムの切り立った稜線が迫っている。


すっかり姿を変えたアマ・ダブラム                  タウツェ(右)とチョラツェ(ディンボチェ裏の段丘から)
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 裏手 (北側) の稜線に登ると向こう側にはチョラ・コーラ沿いの段丘が広がっていて、放牧されたヤクの姿を見ることができる。広い谷底に広がるペリチェ村 (4240m)までは150mほどの標高差で、もちろん対岸は一気にタウツェとチョラツェまでせり上がっている。平坦な段丘地を谷の奥に進めば、突き当たりでペリチェからの道と合流する筈だ。一方、振り返って見下ろせばディンボチェの村を俯瞰できるが、左手方向に伸びるイムジャ・コーラの奥にイムジャ・ツェ (アイランド・ピーク : 6160m) の三角錐が見える。氷河湖はその直ぐ右麓の筈だ。更にその奥はチョー・ポル (6711m) から バルンツェ (7129m) へ到る稜線が行く手を塞いでいる。アマ・ダブラムとローツェに挟まれたこの谷は袋小路なのだ。息苦しさに逆らわないように深呼吸を繰り返しながらゆっくりゆっくりと稜線上を2・3百メートルも登れば、素晴らしいことにバルンツェの向こう側遠くマカルー (8463m) の美しい山頂を臨むことができるだろう。ローツェに次いで世界で5番目に高い山だ。


ディンボチェ村と行く手のイムジャ・コーラ                              マカルー遠望(中央左奥)
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 ディンボチェからイムジャ・ツェB.C.(アイランド・ピークB.C.; パレシャヤ・ギャブ) やイムジャ氷河湖へは、この先のチュクンからの往復になる。チュクンまでは3時間弱ほどでしかないのだが、標高差は400mほどある。前に停滞日を設けたナムチェからまだ2日しか歩いていないのだが、高度順応の為にはこの村で連泊するするのが普通だ。エヴェレスト・ベースキャンプやカラ・パタールへの拠点であるゴラクシェプ方面に向かう場合にも、ペリチェで連泊するかペリチェで1泊、ディンポチェに登って更に1泊という行程だろう。


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                                                     ディンボチェからのローツェ
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by meiguanxi | 2009-03-06 19:30 | ヒマラヤ・チベット
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