アンタクヤ (トルコ) : シルクロードの終点
[ 西アジア略地図 ]
b0049671_18264579.jpg
                                                         アンタクヤの町並み

 現在ではイスタンブールのオトガル(バスターミナル)は旧市街からトラム(路面電車)と地下鉄とを乗り継いだ遥か郊外に移ってしまったが、以前は中心部から5km程の テオドシスの城壁 のすぐ外にあり、トプカプ・ガラジと呼ばれていた。それは現在のオトガルのように近代的な場所ではなく、舗装もされていない広大な広場に無数のバス会社のブースが無秩序に立ち並び、数え切れないバスが犇く、それは混沌の坩堝のような場所だった。現在ではアジア側に渡る多くのバスが第2ボスポラス橋を渡るのかもしれないが、まだボスポラス海峡に架かる橋が1本だった時代だ。
 午後3時にトプカプ・ガラジを出発したバスは、約20時間掛けて地中海の最奥北端の小さな町に着く。ここを南に下ればシリアやヨルダンといったアラブ中東。トルコの外れの町であり、中東への玄関口だ。アンタクヤは第一次世界大戦から暫くフランス統治下のシリアに編入されていたことがあり、現地では当時の呼び名であるハタイの方が通じが良い。だが、歴史や聖書に詳しい方には、ギリシャ風にアンティオキアと言った方がピンと来るだろう。


旧市街の路地とモスクの鐘楼                                ハビブ・ナシャル・ジャミィ(モスク)
b0049671_18284932.jpgb0049671_18301264.jpg


 東は中央アジアからインダス川(現パキスタン)にまで及ぶ大帝国を打ち立てたギリシャ(マゲドニア)のアレクサンドロス(アレクサンダー)の死後、帝国は本拠地バルカン半島のマケドニア王国、プトレマイオス朝のエジプト王国、セレウコス朝のシリア王国、及びその他の小国に分裂する。この内、小アジア(アナトリア:現在のトルコ)からインダス川に及ぶ西アジア一帯の広大な領土を引き継いだのが、シリア王国だ。アンティオキアは、セレウコスⅠ世によって紀元前300年頃に建設され、シリア王国の首都となった。


聖ペテロ教会(外観)                                              聖ペテロ教会(内部)
b0049671_18305612.jpgb0049671_18315593.jpg











     キリストの死後、使徒ペテロがこの地を拠点に布教活動を始め、
   弟子達が初めて「キリスト者(クリスチャン)」と呼ばれたのも、この町
   だ。勿論キリストはキリスト教徒であった訳はないので、ここがキリス
   ト教という宗教発祥の地だと言っても過言ではない。町の郊外には、
   ペテロが初めて説教をし、キリスト者のコミュニティを作ったとされる
   石窟寺院、聖ペテロ教会が今も残る。尤も、山の斜面に穿たれた内
   部は意外に狭く、壮麗な装飾も無い。ただ想像力だけが往時への案
   内人だ。
  また、ローマ時代には、ローマ、アレクサンドリア(エジプト)、コンスタンティノープル(イスタンブール)、エルサレムと並んで、ローマ教会の五大本山が置かれた場所でもある。しかし、6世紀の大地震やイスラームの進入により、現在では見るべき遺跡も殆ど残っていない。
 ここは遥か長安から続いてきたシルクロードの陸の終点だ。物品はここから船でローマを始め各地に輸送されていった。しかし、現在のアンタクヤの町は静かな田舎町だ。12世紀の十字軍によって造られた教会が、後にイスラームのモスクに改修されが、このハビブ・ナジャル・ジャミィだけが、僅かに往時を偲ばせる。町にはアラブ系の住民も多く、ここから西に1時間程、十字軍時代の要塞跡などが残る道を行けば、シリアとの国境。シリアの地図では今も、この町はシリア領として記載されていると言う。
 僕がこの町を訪れたのは1992年、当時はここからシリアやヨルダンに向かうためには、イスタンブールの日本領事館(又はアンカラの大使館)で発行してもらったレターを持って当該領事館(大使館)でヴィザを取得しなければならなかったが、その後、ビザを巡る状況は時々に変化しているようだ。現在のアンタクヤの町は往時の賑わいもさほど観光資源があるわけでもないが、いずれにせよ陸路に拘る旅行者にとって今もこの町は要衝であることに変わりはない。

b0049671_18323614.jpg
                                                              町のナン屋
[PR]
by meiguanxi | 2007-10-04 18:34 | 絲綢之路Ⅲ[西亜]
<< アレッポ (シリア):古代商業... テングリ (チベット) : ヒ... >>