アルチ・トゥジェチェンポ・ゴンパ(ラダック):曼荼羅に囲まれたお堂
[ カシミール・ラダック略地図 ]
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                                                   トゥジェチェンポ・ゴンパ遠景

 アルチはインド西北部ヒマラヤ山中ラダックの中心の町レーからインダス川右岸を西に下ること60数km、サスポル村の先で街道と分かれ、吊橋で対岸に渡り4kmほどの所にある小さな村だ。この村を有名にしているのはラダックに留まらずチベット文化圏随一とも言われる仏教美術の宝庫、アルチ・チョスコル・ゴンパ(ゴンパはチベット仏教僧院)の存在だ。
 今では夏の2・3ヶ月の間、毎日のようにチャーターされた四輪駆動車がレーから沢山の外国人旅行者を運んで来る。1994年に訪れた時にはなんのことはない農村に過ぎなかった村、だが2007年に再訪すると村には多くのゲストハウスが建ち、チョスコル・ゴンパの狭い参道には土産物屋が軒を連ね、ケーキを食べさせるカフェまでできていた。村の規模と観光客数のアンバランスに戸惑ってしまうほどだ。だが多くの旅行者はゴンパを見ただけで足早にレーに戻ってしまうし、宿泊客たちもそれぞれのゲストハウスで食事を取るので、夜の村は至って静かで道は暗い。
 この旅行者数の変化はチョスコル・ゴンパ拝観のレギュレーションにも変化をもたらしていた。そのひとつは内部の写真撮影が完全に禁止されてしまったことだ。その意味では94年に僅かばかり撮った写真は貴重なものになってしまった。もうひとつは、少なくとも2007年の夏、ひとつのお堂が公開されなくなっていたということだ。僧侶に訊ねると、忙しいからというのがその理由だった。このゴンパは日常的に僧侶達が勤行をしているゴンパではない。拝観は1人(時に2人)だけで番をしている僧侶に拝観料を支払い、彼が順番に錠前を外してくれるお堂を見学するのだが、彼はそのつど鍵を掛け直す。しかも撮影禁止である訳だから、誰かが何処かのお堂を見学している間、彼はそれに付き添っていることになる。確かに忙しいし、うっとしいことだろう。彼は常に不機嫌で苛立っていた。
 さて、僕はこの時、ザンスカールでのトレッキングで足首を骨折しており、痛む足を引き摺ってインダスの橋から歩いて来ただけに、これらの変化や僧侶の対応にかなり凹んでいた。ところが、以前には情報不足から観ることのなかった別のゴンパを訪れたことで、僕の気分は一気に晴れ渡ってしまった。
 トゥジェチェンポ・ゴンパはチョスコル・ゴンパへの参道に背を向けて、村の民家と畑の中を歩き、澤を渡った村外れの岩の上にひっそりと建っている。チョスコル・ゴンパとは違って訪れる人も少なく、常住する僧侶もいない。それぞれ独立した建物が小さな中庭を囲んでいる。ゴンパというよりはお堂の集まりだ。
 近所の住民が世話をしているらしいが、普段開いているのは中央のツァツァプリ・ラカンと右側のトゥジェチェンポ・ラカンの2つ。どちらの内部もその壁面の全てが素晴らしい曼荼羅で埋め尽くされている。僕が訪れた時にはたまたまもうひとつ、左側の建物の2階に或るあるお堂でドイツ人の若い女性が壁画の誇りを払い、ひび割れ捲り上がってしまった塗料を押し返す作業をしていた。痛みが激しいのだ。小さなトーチで照らしながら乾いた綿(わた)でそっと押さえる。神経を使う地道な作業だ。ひび割れた塗料は数ミリの破片になって浮き出している。彼女の所属するプロジェクトの規模は分からないが、早急な、根本的な対策が施されるべき文化遺産は、この地域にはあまりに多い。



                             【トゥジェチェンポ・ラカン】

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                              第三のお堂(名称不明)

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              第三のお堂入口からのトゥジェチェンポ・ラカン(右)とツァツァプリ・ラカン
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by meiguanxi | 2007-10-14 23:41 | ヒマラヤ・チベット | Comments(0)
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