[ 西アジア略地図 ]
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ここは駅だ。
夜、21時半くらいだろうか。待合室で国際列車を待っている。ここはその始発駅だ。
それにしては閑散としている。正面のベンチに写っている以外にも、
この部屋の中には何人かの人達が壁に備え付けられたベンチに座っている。
でも彼らは列車を待っている訳ではない。ただの酔っ払いであり、或いはジャンキー…
そもそも国際列車の出発駅の待合室にしては、シートが少な過ぎる。
まあ、文句を言ってもどうにか成るものではないのだが。
だいたい、この時間の乗降客自体が多くはない。
これから国際列車が発車するんだぞ、というような緊張感は駅の何処を探しても見当たらない。
必要以上に高い天井に吊るされた古めかしいシャンデリアはほの暗く、
まるで前衛演劇の舞台セットのように空気が止まっている。
この待合室の片隅にいた老女が自分のベンチを離れて突然、芝居じみた大きな声で何かを叫ぶ。
その声が、高い天井にわざとらしい程に反響する。
勿論、僕にはその言葉の意味は分からない。
けれどこの国の人達である他の人々にも、その意味がどのくらい伝わっていたのか。
彼女は時々、それを繰り返す。明らかに精神に問題を抱えているのだろう…。
その声を、港からの汽笛が打ち消す。

イスタンブール、シルケジ駅。ヨーロッパ側の終着駅だ。
ここを22時に発車した列車には2等車両しか繋がれていない。
乗客は疎らで、乗った車両には他に誰もいない。寒さに凍える車内。
いつの日か、今度はアジアから渡って戻ってくるよ…
1989年1月末、動き出した列車の窓外に過ぎるアヤ・ソフィアを見上げながらそう呟いた。
そして事実、僕はその後2回の旅で3回もこの街を訪れることになったのだ。
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by meiguanxi | 2007-11-06 22:57 | 絲綢之路Ⅲ[西亜]
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