勐拉(mengla 雲南省): ヴェトナム国境の小さな村
[ 雲南省略地図 ]
b0049671_18225248.jpg
                                                            高床式の住居

 雲南省ヴェトナム国境、紅河(honghe)哈尼族彝族自治州(ハニ族・イ族)の金平の定期市については既に紹介した。金平の町は苗族瑶族傣族自治県(ミャオ族・ヤオ族・タイ族)というのだが、周辺には少数民族の小さな町や村が点在している。
 定期市は近隣の村を巡って6日に1度まわってくる。つまり金平で市が立たない他の5日間は那発(nafa)、金水河(jinshuihe)、十里村(shilicun)、銅廠(tongchang)、阿得博(adebo)、勐拉(mengla)といった周辺の何処かで開かれているということだ。6日というのはどうにも中途半端であるようだが、これは農暦の日の干支によっているためだ。年にではなく日に子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥の12支が付いていて、金平なら子と午の日という具合に決まっている。他にも哈尼族で有名な元陽(yuanyang)へ行く途中の老勐(laomeng)では日曜日といったように、西洋暦の曜日によって決まっている場所もあるらしい。
 しかし僕が訪れた時には詳しい情報を持っていず、それらを独自で調べるには当時の僕の中国語はあまりに頼りなかった。分かっていたのは金平と那発と勐拉でそれぞれ6日に1度の市が立つということだけだった。最も詳しいと思われるガイドブックにさえ150文字に満たない金平の記載があるだけだったのだから仕方が無い。
 とにかく6日に1度では予め定期市の日程を知ることは不可能で、僕の場合には小さな金平の町で3日も待つことになった。勐拉(モンラ)へ行ってみたのはそんな暇を持て余した金平での2日目だった。町角でたまたま見掛けた勐拉という行き先表示の付いた乗り合い軽トラックに気紛れで乗ったのだ。


綿花紡ぎ                                                              機織り
b0049671_18381091.jpgb0049671_18385910.jpg



 山道を1時間半、勐拉は到って静かな、寂れたと表現した方が良いかもしれないような田舎の村だった。村の真ん中に幅の広い100m足らずの通りがある。未舗装の通りの両側には簡素な木製の縁台が並んでいる。縁台といっても腰掛けるための物ではなく、市の時に商品を並べるのだろう露天の台だ。市の日ではなかったこの日はほんの僅かな人達が野菜や肉、それに砂糖黍を売っているくらいで、牛の午睡のように閑散としていた。
 それでも露天の女性は赤い三角帽を被り、黒地の前合わせの上着は襟から合わせ部分に掛けて華やかな刺繍が施され、腕当てと帯と前掛けは揃いの鮮やかな青、ズボンにはこれも色鮮やかな刺繍が施されている。紅頭瑶族だ(金平の頁参照)。とはいえ売り子以外にはその衣装は見られないので、ここはタイ族の村であるのかもしれない。今は閑散とした村だが、ずらりと並んだ露天台をみていると、定期市の日にはさぞかし壮観なのだろうなと思われた。
 村外れに比較的大きな川が流れていて、その川岸にはこちら側にも対岸にも竹編みの壁面に萱葺きの高床式住居が点在している。集落の中に入って行くと手製の折機で機織りをしたり手車で綿花を紡いだりする女性の姿が見られる。以前は西双版納(シーサンパンナ)の景洪(jinghong)辺りでも普通に目にした風景だが、最近では相当に奥地に行かなければ見られなくなった。
 帰りのトラックを探して街道沿いをうろうろしていると、村外れでとある建物に招待されることになる。招待というよりは半ば強引な拉致みたいだったのだが。それは民家ではなく、何かの作業場、または集会所のような所だったのだと思う。十数人の男女が風呂椅子のように低い椅子とテーブルで食事をしながら酒を飲んでいる。飯屋ではなさそうだし、そこに集まっているの人々の間柄もどういった趣旨の宴会なのかも分からなかったが、とにかく強引に酒席に引き込まれてしまった訳だ。
 もちろん彼らは英語など話せないし、単語さえ知らない。当時の僕の中国語ときたら全くお話にならなかったのが、そこは筆談という手もある。通じているのかいないのか良く分からない会話が延々と続き、結局のところ金平への最後の車が出る寸前まで たらふく食べさせられ しこたま呑まされる。もちろんアルコール度数の高い透明な白酒(バイジュウ)だ。
 「幾らか払わせてくれないか」
 「そんなもん要らねえよ、日本人の朋友、要らねえ、要らねえ」
 僕はふらふらと村の広場まで歩き、発車間際のワゴンに乗り込む。酔いと闘い素面を装いなから見る日が沈み掛けた車窓は、来る時に気を止めなかったのが不思議なほど深い山の中だった。


b0049671_1825989.jpg
                                                          川で洗髪する女性
[PR]
by meiguanxi | 2008-02-02 18:41 | 雲南省と少数民族 | Comments(4)
Commented by zeroorleast at 2008-02-05 21:49
最後の写真はカメラ、川の上からですよね・・橋?対岸から望遠?
水、綺麗そうですね♪
Commented by yamane at 2008-02-06 00:53 x
旅人冥利に尽きるとは、きっとこういう日のことを指すのでしょうね。この会話のところがすごくいいな。ちゃんとこう言える没さんもいいし、相手のおじさんの言葉も雰囲気が伝わります。しこたま白酒……。私じゃ飲めなくて興ざめだったでしょうね、村人たちにとって。お酒が飲めるってのも旅人にとって必要なことの1つかも(笑)
Commented by meiguanxi at 2008-02-07 21:01
ヤマネさん、そうですね、僕、そちこちで呑まされたりご馳走されたりしてるかもしれませんw 旅してて、絵を描けたり楽器ができたりする人、凄く羨ましいんです。その国の言葉ができる人もね。僕にできることは一緒に呑むことくらいです^^A;
Commented by meiguanxi at 2008-02-07 21:05
りーさん、これは魔女の箒に乗せてもらったんです。ところがそれが見習いだったもので、この直後、川にジャポーン…冗談ですw ええと、橋の上ですね。水は綺麗でしたよ。支流の上流ですしね。多分、この辺なら化学物質の汚染もまだないかと・・・農薬は不明ですが・・・^^A;
<< 黄草坝(huangcaoba ... バックハー(ヴェトナム): 花... >>