チョモランマ北壁(ロンブク谷・ベースキャンプ手前) (※ 今回の写真は1993年撮影のもので、記事とは関係がありません) 2008年5月8日、チベット人たちの願いと世界からの懸念と批判にも拘らず、北京五輪のトーチがついにチョモランマ(エヴェレスト)山頂に運ばれてしまった。 3月以来チベット各地で僧侶や市民・遊牧民たちが中国によるチベット占領と人権や宗教への弾圧、文化や環境の破壊、中国人による搾取等へ抗議の声を上げた。この抗議の声を中国政府は外国メディアをシャットアウトした上で、武装警察と軍によって武力制圧した。このことを切欠に世界各地で聖火リレーへの抗議の渦が巻き上がった。中国政府が 「オリンピックと政治とを結び付けるべきではない」 と言っているだけではなく、日本でも少なからぬ人達がその意見に同調しているのかもしれない。だが、その中華人民共和国はこれまでに政治的な理由で幾度となくオリンピックをボイコットしているのだ。いや、その頃と今とでは中国も変わろうとしてきてはいるのかもしれない。だが、実際に彼らはオリンピックを国威発揚の手段として政治化しているのは事実だ。さらにオリンピックを前にした開発の為に補償や人権を無視した立ち退き等を政治的に推し進めたのも事実だ。 そして聖火のチョモランマ登頂とは正に、「チベットは中国の土地である」 と国内外に宣言するためのプロパガンダ・イベントに他ならない。僕はこの聖火のチョモランマへの登頂ということについて3月の騒乱以前から懸念を表明してきたのだが(参照)、今、チベット人たちがどのような想いでそのニュースを耳にしたのだろうと想像すると胸が痛い。彼らにとってそれは身内が陵辱されるにも等しい苦痛だったに違いないのだ。「政治とオリンピックは別」…日本という国でチベット問題などに関心も無く殆ど知りもしなかった人達の、そのような無邪気な言葉が虚しい。いや、正直に言えば腹立たしい。 聖火がチョモランマを汚したその時、中国の最高指導者たる胡錦濤(hu jintao : コキントウ)国家主席は日本にいた。1989年、ラサで抗議の声が上がった時の、「チベット自治区」の中国共産党書記という自治区最高責任者だった人物でもある。この時にはラサに戒厳令を敷き、軍と武装警察よって徹底的に弾圧した。その時の映像の一部は現在、You Tube などでも見ることが出来る。この武力鎮圧の 「功績」 が彼の中央への足掛かりとなったのだ。 5月6日、中国国家主席としては10年振りの来日となったその日、東京・外苑前の日本青年館ではこの問題での中国の対応を批判しチベット支援の声を上げようと1200人の集会が行われ、これに続く原宿方面へのデモには実に4000人が結集した。もちろん主催団体が用意した物もあるわけだが、実に多くの人達がチベット旗を持参していた。終着の代々木公園に翻るその圧倒的な数には、長野を経験してきた僕の目にも圧巻だった。また同じ日、大阪でも数百人によるデモが行われたようだ。(同日夜、日比谷でデモ隊と警官隊との小競り合いがあったようだが、日比谷でのデモを呼び掛けたのは、日本青年館で集会を行い原宿・代々木公園へのデモを呼び掛けた団体ではない) ところで、どうも未だに日本の大手メディアではこの抗議行動の報道が軽んじられているような気がしてならない。或いは胡錦濤主席が訪れる先々でも沢山の取材陣が抗議者にインタビューしているにも拘わらず、まともな回答が使われることは殆ど無く一部右翼勢力による混乱に焦点を当てたり、或いは「大きな混乱も無く」 という形容が付いた報道に終始しているケースが多いような気がする。大きな混乱が無ければ報道しないのだろうか。卵を投げ付けるとか逮捕者がでるとかしない限りは報道しないのだろうか。逮捕者が出てもその混乱だけを伝え、その背景を一切伝えないマスメディアとはいったい何なのだろう。このブログの常連の方たちなら既にご存知のことだと思うが、長野で聖火の前に飛び出して逮捕された人、殆どの報道では 「台湾籍の男」 と伝えられた人が実は亡命チベット人2世だということを知っている日本人はどの程度いるのだろう。彼、タシ・ツェリンさんは暴力行為を働こうとしたのではなく、ランナーの前を走るメディアのカメラに向かってチベット旗を広げて泣きながら Free Tibet!と叫んだだけなのだという事実を、正確に認識している日本人がどれだけいるのだろう。そして、あの程度の 「威力業務妨害」 で5月11日今日現在尚、拘束され続けているということをどれだけの日本人が知っているのだろう。卵投げ男などは当日だか翌日だかに早々に釈放されているにも拘わらず。 ※ 5月18日追記 タシ・ツェリンさんは16日午後、地検から漸く釈放された。 ※ 本文とは関係ないが、今日2008年5月12日、アバ(現四川省チャン族・チベット族自治州)で大きな地震があり、揺れは北京や台湾にも達したという。九寨溝や黄滝といった自然遺産やパンダの生息地でもある。午後21時現在、チベット人居住地域(震源を含めて)の情報や声が全く入ってきていないのが不安だ。 テングリ村の朝
by meiguanxi
| 2008-05-11 21:12
| Free TIBET
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