カテゴリ:Air Mail( 14 )
from Leh : 長く険しい移動
b0049671_1633123.jpg

                                                           2007.6.20

 2泊3日のバスといえば、今時はすこしはマトモなバスなのだろうと、僕は期待していた。
 一昔前、インドのバスといえば大財閥のTATA製のバスしかなく、これは中国のバスとともに最悪の乗物として世界中の旅行者から恐れられ、忌み嫌われていた。だが当時の旅行者には他に選択の余地が無かったので、まるで何かの苦行にでも入るような面持ちで戦々恐々として乗り込んだものだ。だが現在、中国では場所によっては日本製やドイツ製の高級バスが走っていたりもする。インドでも経済開放後はもっとマシなバスが走ってる。
 だが勿論、僕の乗るべきバスはTATAバスだった。片側2席、片側3席の、シート幅の極めて狭い、サスペンションという概念があるのかすら疑わしいようなバスだ。この歳になってまたもこのバスに乗ることになった運命を、僕は軽く恨む。唯一幸いだったことは、前方ドアのすぐ後ろだったことだ。僕の前にシートは無い。
 デリーを15:45に発車したバスは、北インドの果てしなく続く大平原をひたすらに北上する。何処まで行っても平らな耕作地と疎らな林、そして荒れた草地が続く。大自然と言うには何処と無く美しさを感じないのがインドだ、と言ったら偏見だろうか。隣の席の大男は大股を広げて、僕の方に頭を乗せて他愛も無く眠っている。いったいどういう理由で、アジアで長距離のボロバスに乗ると決まって隣には大股を広げる大男が座ることになっているのだろう。
 車窓には下弦の月が西の空低く傾いている。そのすぐ上に木星が輝いている。その距離があまりに近いので、まるで何処かの国の国旗のように見える。やがて木星は、月の陰の部分に吸い込まれた。夜半近く、インド平原の西北辺の要衝であるチャンディガルを通過すると、道は細くなり山がちになる。
 あれほど暑かったデリーが嘘のように、夜明けに着いた田舎町の空気はピンッとしていた。午前中、ヒマーチャル・プラデーシュ州の有名な観光地マナーリでギュウギュウ詰めの新しい客を満載したバスは、標高3978mのロータン峠への九十九折の道を喘ぎながら登る。10年前にこの峠を越えてスピティ地方に行った時とは違い、今は雪の残る峠はインド人観光客で溢れていた。
 峠で止まることなくバスは北側に下る。谷にはチャンドラ川が東西に流れ、これを東に遡ればスピティに至る。今回は西に下る。やがてこの川と別れ、バガ川を遡ればラホール地方の中心ケーロンの集落、17時、今日の宿泊地だ。先に進む乗客たちはそれぞれ宿を探しに散っていく。ほんの小さな町に過ぎないが、ホテルもレストランもあり、電気も通っている。24時間ホットシャワーが浴びられるというから驚く。この辺りはすっかりチベット文化圏で、ゴンパ(僧院)やチョルテン(仏塔)が目に付き、チベット服を着た女性が行きかっている。今は通り過ぎるだけだが、1ヶ月先にもう一度訪れることになるかもしれない。
 翌日、デリーから3日目の早朝5:15、まだ明け切らぬ山道をバスは再度走り出す。ケーロンから30kmほどのダルチャを過ぎると集落は殆ど無くなり、道は危うい峠道の連続になる。樹木は無く、白茶けた岩山と土と、時折の残雪だけの単色の世界だ。ただ、谷の遥か下方に見える川の乳緑色と空の蒼だけは果てしなく鮮やかだ。
 3950m、続いて3950m、5050mと標高の高い峠が続く。峠の上にはさっきまでの青空が嘘のように、雪が真横に吹雪いていたりする。やがてこのコースの最高地点、5317mのタグラン峠を登る。僕の知る限り、定期路線バスが運行されている世界で最も標高の高い道だ。不思議なことに、その峠を登り切るとそこは広い平原が続いている。その土漠のような高原をひた走り、やがて長い九十九折を下り切ると、チョルテンが目に入る。無人地帯から人の住むラダック地方の谷に降りたのだ。道はインダス川上流に合流し、これを更に150km西に下れば、漸くラダックの中心の町、レーに至る。
 19:30、ケーロンでの宿泊休憩を除いても実に40時間に及ぶ厳しい移動だった。
 まずはビールだ。しかし、頭と首筋が酷く痛んではいるのだが。
       (誤字脱字、推敲の時間が無く、申し訳ありません)
                                                              by 没関系
[PR]
by meiguanxi | 2007-06-23 21:39 | Air Mail | Comments(4)
from Delhi : パハールガンジ
b0049671_15475251.jpg

2007. 6.17

首都の中央駅の前から1kmほど伸びる通りがある。
車道と歩道が分かれているような通りではなく、裏道だ。
しかしそこには沢山の商店、飲食店、土産物屋、旅行代理店などが建ち並び、
働く地元の人、地方からのお登りさん、路上の物売り、物乞い、
訳も分からず声を掛けてくる輩、バイク、自転車リクシャー、オートリクシャー、
そして蝿と犬と牛とが犇き蠢いている。
そちらこちらから意味不明な大声・奇声が飛び交い、
始終八方からクラクションが鳴り響き、
舗装されているにも関らず、至る所が水溜りになっていて、
路上は何処もゴミが散乱している。
勿論、注意して歩かなければ牛の糞だって踏むことになる。
ニューデリーはパハール・ガンジ、メインバザールと呼ばれるこの通りは、
決してバンコックのカオサン・ストリートなどとは違う。
そんなに温い場所ではない。
10年振りのインドだがやはり、やれやれという思いにさせられる場所だ。
日本にてインドの町の風景や音楽がTVで流れると、
懐かしくてつい行きたいと思ってしまうのだが、
着いてみれば、やれやれなのである。
不思議な国だ。
さて、インドのインド的なるものが決して得意ではない僕は、
明日の午後にはこの街を離れる。
2泊3日、非常に長く、途中からは非常に厳しい道の移動になりそうだ。

by 没関系

[PR]
by meiguanxi | 2007-06-17 16:12 | Air Mail | Comments(23)
from Bangkok : 潰された定宿
b0049671_1535247.jpg

2007. 6.15

といわけで、何時もの Bangkok です。
バンコックの急激な物価の上昇に加え、円安バーツ高の進行でなんとも辛い状況です。
中でも航空券の高騰は、例の燃油チャージというものを別途徴収するシステム以来、
貧乏人は旅するなとでも言われているような気分です。

さて、バンコックに限らずですが、旅行中に“居場所”ということを時々考えます。
例えばバンコックならバンコックで、僕のことを見知っていてくれる人がいる、
或いはお気に入りの宿や屋台、または場所があるということは、
この街に帰って来る際の喜びと安心感とになるでしょう。
この1年の間に、カオサン・ロードの北側の運河を渡った処にある僕の定宿は
ホテル建設の為に更地にされたようです。
バンラムプー運河を渡ったサムセン通りに
運河に沿って New World Lodge という大きなホテルがあります。
その裏のソイにあった宿の名前は Samsen 2 Guest House。
怪しげなインド人やバングラ人の自称ビジネスマン、若くない娼婦、
パキスタン人の太った娼婦、酷く美しいニューハーフ、
そんな人達が定宿にしている楽しいゲストハウスだったのですが。
その界隈の屋台は相変わらずしぶとく営業しているようで喜ばしいのですが、
なにしろ目の前は建設現場、なんとも情緒の無い光景になってしまいました。

ところで、そんな淋しさに追い討ちを掛けるように、
この街で初めて、病院のお世話に成ってしまいました。
屋台で食べた魚のフライが良くなかったのでしょうか。
20年近くこの街に出入りしていて初めての経験です。
まあ、丸1日苦しんだだけで大事には至らず、
明日にはこの国を出ることになります。
もう一度この街に戻ってくるのは、おそらく2ヶ月くらい先のことになりそうです。

by 没関系

[PR]
by meiguanxi | 2007-06-15 18:40 | Air Mail | Comments(5)
from Tokyo : 旅立ち
b0049671_1441296.jpg                             2007. 6.11

旅に出ます。
実に7年振りの本格的な旅立ちです。
ここのところ、緩慢な更新だったのですが、
紙焼きの写真をスキャンしている僕の更新には結構それなりの時間を要します。
実際、気も漫ろでそれどころではなかったのが事実です。
ところで昔とは違い、
今ではネットでその途上から情報を発信できる世の中に成りました。
でも、世界にはインターネットはおろか、電気さえ通じない地域だって未だに少なくありません。
旅の間も時には消息をお伝えしたいと思っていますが、
今回ばかりはあまり当てに出来そうにありません。
いや、そういう旅ができるかどうか、
実のところ今の僕にはあまり自信もないのですが(笑)
さて、出掛けます。
勝手ですが、このページを長い目で見守って頂けると幸いです。
ま、明朝、寝坊しなければね^^

                                                                 by 没関系
[PR]
by meiguanxi | 2007-06-11 20:07 | Air Mail | Comments(14)